単連結空間

上図の穴あき平面は連結であるが、穴のまわりを1周するループを考えればわかるように単連結ではない。穴を全てふさげば単連結となる。

位相幾何学における単連結空間(たんれんけつくうかん、: simply connected space)とは、任意のループ連続的に1点に収縮できるような弧状連結空間のことである。

定義

ある弧状連結空間の基本群が、単位元のみを要素として持つ自明な群であるとき、その空間を単連結であるという。基本群の場合は基点に留まり続ける定値道を代表元とするループのホモトピー型が単位元になる。つまり、その空間上において(あたえられた基点に対する)任意のループが常にホモトピックな連続変形によって1点(基点)に収縮できれば単連結ということになる。弧状連結という仮定から、任意のループが1点に収縮できるかどうかは基点の取り方に依存しないで定まる。

赤色の線がメリディアン、桃色の線がロンジチュード

線分円板球体やn次元ユークリッド空間、2次元以上の球面などは単連結である。他方、トーラスアニュラスメビウスの帯円周結び目補空間などは単連結ではない。

例えばトーラスの場合、1点に収縮できるようなループも存在するが、右図のようにメリディアンやロンジチュードといった閉曲線上を1周するループをとるとこれは1点に収縮できなくなる。実際、トーラスの基本群

π 1 ( T ) = a , b a b a 1 b 1 = 1 π 1 ( S 1 ) × π 1 ( S 1 ) {\displaystyle \pi _{1}(T)=\langle \,a,b\mid aba^{-1}b^{-1}=1\,\rangle \cong \pi _{1}(S^{1})\times \pi _{1}(S^{1})}

であり、自明な群ではない。

性質

  • 単連結な開集合 A , B が全空間 X被覆し、共通部分 ABでなく弧状連結であるとき、Xも単連結である。
  • 単連結空間の直積もやはり単連結である。
  • 可縮な空間は単連結である。

関連項目

参考文献

  • 瀬山士郎 『トポロジー―ループと折れ線の幾何学』 朝倉書店、1989年、91-94頁。ISBN 978-4254114652。
  • 小林一章 『曲面と結び目のトポロジー―基本群とホモロジー群』 朝倉書店、1992年、22-23頁。ISBN 978-4254114713。
  • クゼ・コスニオフスキ著、加藤十吉訳編 『トポロジー入門』 東京大学出版会、1983年、140-142頁。