批評空間

批評空間(ひひょうくうかん、:critical space)とは、太田出版から刊行された批評専門誌。及び、その編集者らが作った協同組合出版社(組合員は柄谷行人浅田彰鎌田哲哉など)。1988年から1990年まで刊行された『季刊思潮』(思潮社)の後続季刊誌。

1991年4月から1994年1月までを第1期、1994年4月から2000年4月までを第2期、2001年10月から2002年7月までを第3期とする。

歴史

1988年に劇作家鈴木忠志の誘いで市川浩柄谷行人が『季刊思潮』の編集に携わる。四号目から浅田彰が参加。この雑誌が本誌の前身となった[1]

1991年、太田出版から「批評空間」創刊

2001年2月、生産協同組合・批評空間社設立。

2001年7月7日、紀伊国屋書店・批評空間が共同で第126回紀伊国屋セミナー「批評空間独立記念イヴェント 第Ⅲ期「批評空間」を創刊する」を開催。紀伊國屋ホールにて。磯崎新岡崎乾二郎山城むつみ浅田彰柄谷行人が共同討議「新たな批評空間のために」を行った。

2002年5月19日、編集長内藤裕治が急逝。

2002年8月20日、浅田彰柄谷行人は連名で『批評空間』の終刊と批評空間社の解散を告知した。

刊行リスト

第1期

編集人:山村武善、発行人:福武總一郎、発行所:株式会社福武書店

  • 『批評空間 No.1 特集=近代日本の批評』1991年4月
  • 『批評空間 No.2 特集=近代日本の批評』1991年7月
  • 『批評空間 No.3 特集=近代日本の批評 カント(再)発見』1991年10月
  • 『批評空間 No.4 特集=湾岸戦争以後 小説の論理あるいはフェミニティとモダニティ」1992年1月
  • 『批評空間 No.5 特集=江戸思想史への視点 ヘルダーリンとドイツ・ロマン派』1992年4月
  • 『批評空間 臨時増刊号 Anyone』1992年6月 第1回Any会議の記録。第2回からは、NTT出版からAnyシリーズとして出版
  • 『批評空間 No.6 特集=スラヴォイ・ジジェクとラカンの可能性』1992年7月
  • 『批評空間 No.7 共同討議 植民地主義と近代日本』1992年10月
  • 『批評空間 No.8 共同討議 夏目漱石をめぐって』1993年1月
  • 『批評空間 No.9 特集=ネーションとナレーション』1993年4月
  • 『批評空間 No.10 特集=芸術の理念と〈日本〉』1993年7月
  • 『批評空間 No.11 特集=音声と文字/日本のグラマトロジー』1993年10月
  • 『批評空間 No.12 特集=中上健次をめぐって』1994年1月

第2期

編集人:山村武善(1-5号)、内藤裕治(6-25号)、発行人:高瀬幸途、発行所:株式会社太田出版

  • 『批評空間 II-1 共同討議〈戦前〉の思考」』1994年4月
  • 『批評空間 II-2 特集=ベンヤミンから出発して』1994年7月 本号よりAndreas Huyssen、John Rajchmanが編集顧問に加わる
  • 『批評空間 II-3 特集=日本文化とジェンダー」』1994年10月
  • 『批評空間 II-4』1995年1月
  • 『批評空間 臨時増刊号 モダニズムのハードコア:現代美術批評の地平』1995年3月
  • 『批評空間 II-5 特集=マルクスの現在』1995年4月
  • 『批評空間 II-6 特集=政治的なもの 証言と記憶 京都学派』1995年7月
  • 『批評空間 II-7 特集=政治と歴史 モダニズムと美術批評』1995年10月
  • 『批評空間 II-8 特集=宗教と宗教批判 セックス/ジェンダー』1996年1月
  • 『批評空間 II-9 特集=ドゥルーズ』1996年4月
  • 『批評空間 II-10 共同討議 「批評」の場所をめぐって』1996年6月
  • 『批評空間 II-11 特集=ポストコロニアルの思想とは何か』1996年10月
  • 『批評空間 II-12 共同討議 アドルノのアクチュアリティー』1997年1月
  • 『批評空間 II-13 共同討議 責任と主体をめぐって』1997年4月
  • 『批評空間 II-14 共同討議 宮沢賢治をめぐって』1997年7月
  • 『批評空間 II-15 特集=ドゥルーズ』1997年10月
  • 『批評空間 II-16 特集=同性愛とファシズム』1998年1月
  • 『批評空間 II-17 特集=韓国』1998年4月
  • 『批評空間 II-18 特集=トランスクリティ-クと(しての)脱構築 ドゥル-ズ的思考』1998年7月
  • 『批評空間 II-19 特集=カントのアクチュアリティー 記憶と建築』1998年10月
  • 『批評空間 II-20 特集=世界資本主義論 ドゥルーズをめぐって』1999年1月
  • 『批評空間 II-21 特集=いま批評の場所はどこにあるのか』1999年4月
  • 『批評空間 II-22 特集=世界資本主義からコミュニズムへ』1999年7月
  • 『批評空間 II-23 特集=貨幣主体と国家主権者を超えて』1999年10月
  • 『批評空間 II-24 特集=天皇と文学 映像と政治』2000年1月
  • 『批評空間 II-25 特集=批評と運動 ゴダールの『映画史』をめぐって』2000年4月

第3期

編集人・発行人:内藤裕治、発行所:株式会社批評空間

  • 『批評空間 III-1 特集=新たな批評空間のために ラテンアメリカとネーション』2001年10月
  • 『批評空間 III-2 特集=「帝国」と「原理主義」『トランスクリティーク』『ルネサンス 経験の条件』をめぐって』2002年1月
  • 『批評空間 III-3 特集=「日本精神分析」再論』2002年4月
  • 『批評空間 III-4 特集=アナーキズムと左翼』2002年7月

批評空間社・刊行目録

  • 『トランスクリティーク』(2001年9月)
  • 『柄谷行人初期論文集』(2002年4月)

単行本化された掲載作品

  • 『近代日本の批評:明治・大正篇』(柄谷行人編、福武書店、1992年)のち文庫(講談社文芸文庫、1998年)
  • 『悪文の初志』(井口時男、講談社、1993年)
  • 『本居宣長』(子安宣邦著、岩波書店、1993年)のち文庫化(岩波現代文庫、2001年)
  • 『ロシア・アヴァンギャルド建築』(八束はじめ著、INAX出版、1993年)
  • 『貨幣論』(岩井克人著、筑摩書房、1993年)のち文庫(ちくま学芸文庫、1998年
  • 『物語と反物語の風景:文学と女性の想像力』(水田宗子著、田畑書店、1993年)
  • 『シンポジウムI』(柄谷行人編、太田出版〈批評空間叢書〉、1994年)
  • 『エッフェル塔試論』(松浦寿輝著、筑摩書房、1995年)
  • 『折口信夫論』(松浦寿輝著、太田出版、1995年)
  • 『プラスティック・ソウル』(多和田葉子著、太田出版、1996年)
  • 『漱石論:鏡あるいは夢の書法』(芳川泰久著、河出書房新社、1994年)
  • 『ユートピアのラカン』(赤間啓之、青土社、1994年)
  • 『Anywhere:空間の諸問題』(磯崎新・浅田彰編、NTT出版、1994年)
  • 『日本近代文学と〈差別〉』(渡部直己著、太田出版〈批評空間叢書〉、1994年)
  • 『日本近代文学の〈誕生〉』(絓秀実著、太田出版〈批評空間叢書〉、1995年)
  • 『残像のなかの建築:モダニズムの〈終わり〉に』(田中純、未來社、1995年)
  • 『坂口安吾と中上健次』(柄谷行人著、太田出版、1996年)のち文庫(講談社文芸文庫、2006年)
  • 『ドゥルーズ・映画・フーコー』(丹生谷貴志著、青土社、1996年)のち増補新版(2007年)
  • 『闘争するフェミニズムへ』(大越愛子著、未來社、1996年)
  • 『男であることの困難:恋愛・日本・ジェンダー』(小谷野敦著、新曜社、1997年)
  • 『煙草は崇高である』(リチャード・クライン著、太田出版〈批評空間叢書11〉、1997年)
  • 『西田幾多郎:他性の文体』(小林敏著、太田出版〈批評空間叢書〉、1997年)
  • 『小林秀雄』(前田英樹著、河出書房新社、1998年)
  • 『シンポジウムIII』(柄谷行人編、太田出版〈批評空間叢書〉、1998年)
  • 存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』(東浩紀著、新潮社1998年
  • 『郵便的不安たち』(東浩紀著、朝日新聞社1999年)のち文庫
  • 『ドイツ精神の近代』(未來社、2000年)
  • 『二十一世紀の資本主義論』(岩井克人著、筑摩書房、2000年)のち文庫(ちくま学芸文庫、2006年)
  • 『映画の世紀末』(浅田章著、新潮社、2000年)
  • 『芸術の名において:デュシャン以後のカント/デュシャンによるカント』(ティエリー ド・デューヴ、青土社、2001年)
  • 『ルネサンス:経験の条件』(岡崎乾二郎著、筑摩書房、2001年)
  • 『三点確保:ロマン主義とナショナリズム』(山田広昭著、新曜社、2001年)
  • 『恐慌と秩序:マルクス資本論と現代思想』(新田滋著、情況出版、2001年)
  • 『「帝国」の文学:戦争と「大逆」の間』(絓秀実著、以文社、2001年)
  • 『批評の誕生 批評の死』(井口時男著、講談社、2001年)
  • 『ナチ神話』(フィリップ・ラクー・ラバルト、ジャン=リュック・ナンシー共著、松籟社、2002年)
  • 『近代日本の詩と史実』(野口武彦著、中央公論新社〈中公叢書〉、2002年)
  • 『表象の光学』(小林康夫著、未來社、2003年)
  • 『クリニック・クリティック:私批評宣言』(千葉一幹著、ミネルヴァ書房、2004年)
  • 『南島イデオロギーの発生 : 柳田国男と植民地主義』(村井紀著、岩波書店〈岩波現代文庫〉、2004年)
  • 『存在と灰:ツェラン、そしてデリダ以後』(守中高明著、人文書院、2004年)
  • 『グリーンバーグ批評選集』(藤枝晃雄編訳、勁草書房、2005年)
  • 『表象の奈落:フィクションと思考の動体視力』(蓮實重彦、筑摩書房、2006年)
  • 『精神分析の抵抗:フロイト、ラカン、フーコー』(ジャック・デリダ、青土社、2007年)

主な執筆者

評価

日本語が読める外国人の美学者が、日本の研究のためではなく世界の批評の動向を知るために本誌を読んでいたという[2]

関連項目

出典

  1. ^ 『柄谷行人 政治と思想』(平凡社小嵐九八郎による柄谷へのインタビュー
  2. ^ 「近代文学の終り」(インスクリプト) 関井光男による柄谷へのインタビュー「イロニーなき終焉」”

外部リンク

  • 批評空間社・社史