歴代名画記

歴代名画記』(れきだいめいがき)は、中国の高級官僚である張彦遠が著した画論・画史の著作である。先史から唐朝までの絵画資料を広く集め整理著述され、研究者にとり文献資料として不可欠とされる。

概要

張彦遠は当時興隆しはじめていた溌墨などの逸格の風潮を嘆き、画の六法によった製作規範を尊んで著述に及んだものとされる。画の勧戒主義が色濃く、強引な論述も散見される。また長い年月の間に誤字脱字を招き難解な部分も多い。しかし、画に対する高邁な理想は格調高く、後世に強い影響を与えた。加えて本書以外に伝えられなかった記事・画論が多く文献資料としての価値が高い。

全10巻のうち、前半の3巻までは叙論であり、大中元年(847年)頃に成立したと思われる。冒頭の「画の源流を叙す」は名文で知られ、この画論の基調をなす。次の「画の興廃を叙す」とは本来は一連の文章であったとする説が有力である。「画の六法を論ず」では謝赫から始まる気韻論がその後、どのように発展したのかを伝えている。

後半の4巻以降は大中7年(853年)に増補されたと推定される。この後半では伝説時代から会昌元年(841年)まで歴代の画家370人の小伝や作品が年代順に掲載されている。

掲載された主な画家

全文

  • 歷代名畫記(維基文庫)
  • 歴代名画記 / 張彦遠著 ; 四賀煌編 (東洋画論集. 上巻) (中央美術社, 1926. 近代デジタルライブラリー所収)

出典資料

  • 小野勝年訳注 『歴代名画記』 岩波文庫、初版1938年(復刊1985年ほか)
  • 古原宏伸 『画論』 <中国古典新書>明徳出版社、1973年。新装版刊
  • 白適銘「『歴代名画記』とその時代 ——張彦遠における政治・士人・著作三者の繋がりをめぐって」
  • 嶋田英誠 WEB版 中国絵画史辞典 (SHIMADA's Dictionary for Chinese Painting)

関連文献

  • 長廣敏雄訳注 『歴代名画記』 平凡社東洋文庫(全2巻、1977年、オンデマンド形式・ワイド版、2003年)。詳細な訳・註解
  • 『校本 歴代名画記』 谷口鉄雄編、中央公論美術出版、1981年。原文の厳密な校訂・解説を行った
  • 中国古典文学大系54 文学芸術論集』 岡村繁・谷口鉄雄訳注、平凡社、1974年、復刊1994年。現代語訳のみ収録
  • 百橋秋穂「随・唐の絵画」- 『世界美術大全集 東洋編4 随・唐』pp.324-328。小学舘。1997年。
  • 宇佐美文理 『歴代名画記-〈気〉の芸術論』 <書物誕生>岩波書店、2010年、ISBN 400-0282980