JR東日本255系電車

JR東日本255系電車
「しおさい」で運用される255系電車
(2021年6月 佐倉駅 - 物井駅間)
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 東急車輛製造近畿車輛
製造年 1993年 - 1994年
製造数 5編成45両
運用開始 1993年7月2日
主要諸元
編成 9両編成 (4M5T)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 130 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 1.8 [1]km/h/s
減速度(常用) 5.0 [1]km/h/s
編成定員 522人(普通車)+42人(グリーン車)=564人
自重 27.3 - 35.7 t
編成重量 278.6 t
全長 先頭車:21,000 mm
中間車:20,500 mm
全幅 2,946 mm
全高 3,785 mm(屋根高さ)
3,995 mm(冷房装置キセ高さ)
3,980 mm(パンタ折りたたみ)
車体 普通鋼
台車 ロールゴム軸箱方式ボルスタレス台車
DT56E形(電動車)・TR241E形(制御車・付随車)
主電動機 かご形三相誘導電動機 MT67形
歯車比 16:97(6.06)
編成出力 95 kW×16 = 1,520 kW
制御方式 VVVFインバータ制御IGBT素子
制御装置 日立製作所製SC111形
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ
抑速ブレーキ全電気ブレーキ
保安装置 ATS-SNATS-P
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255系電車(255けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流特急形車両。「Boso View Express」の愛称がある。

概要

内房線外房線の特急「さざなみ」・「わかしお」には、国鉄時代に製造された183系が使用されていたが、老朽化が進んでいた。一方、房総半島では東関東自動車道の延伸、東京湾横断道路の建設など急速に道路交通基盤整備が進んでいた。このことから、183系の置き換えと、房総半島への鉄道のイメージアップを目的に1993年から房総各線の特急に導入された。

都市間輸送と観光客輸送の両面に対応した車両であり、JR東日本が従来設計・製造した特急形車両である651系251系253系の要素を融合した構造となった。車両のデザイン開発は「GKインダストリアルデザイン」が担当している。

1993年度には通商産業省(現:経済産業省)のグッドデザイン商品(現:財団法人日本産業デザイン振興会主催グッドデザイン賞)に選定された。

構造

車体

車体は普通鋼製である。651系や253系に続きハの字型の車体断面を有しており、先頭形状は非貫通、大型の一枚窓が配置され、ワイパーカバー下に前照灯尾灯が一列に配置されている。乗降扉の数は安房鴨川・銚子方先頭車のクハ255形を除いて各車両1か所とされた。側面窓は253系に比べ上方向に100mm広げられ、乗客の恐怖心を軽減するため心臓よりも高い位置に来るように設置されている。

塗装はベイビーチホワイト(夏のビーチ)をベースに、下半分をパシフィックオーシャンブルー(深みのある太平洋)、乗降口部分にサニーイエロー(明るい陽光と房総に咲く菜の花)を配している。この色は後継車種のE257系500番台や、千葉地区の普通列車用車両(211系209系)の車体帯にも採用されている。

側面の行先表示器は登場当時は字幕式だったが、2005年(平成17年)12月10日のダイヤ改正を前にLED式に取り替えられた。

車内

255系用に新たに設計され、普通車座席のシートピッチは970mmで、グリーン車座席のシートピッチは1,160mmである。普通席には向い合わせのときも使用可能なインアームテーブルが肘掛に収納されており、グリーン席も同様の構造である。また、座席配置はグリーン席も普通席も同じ横方向4列配置である。本形式以降、JR東日本の在来線特急車両のグリーン車は座席定員確保の観点から一部を除いて4列配置が基本となっている。

すべての窓が固定窓であり、停電時などの駅間における長時間停車時の換気を考慮して、各車両の床下に排気用送風機を搭載している[2](非常換気用)。

  • グリーン車車内
    グリーン車車内
  • グリーン車座席
    グリーン車座席
  • グリーン車座席(車いす対応)
    グリーン車座席(車いす対応)
  • 普通車車内
    普通車車内
  • 普通車座席
    普通車座席
  • クハ254-1運転室
    クハ254-1運転室

主要機器

JR東日本の特急形電車としては初のVVVFインバータ制御を採用した。走行システムについては通勤形電車209系910番台(旧901系試作車B編成)の設計を改良して採用している[1]東芝製・GTOサイリスタ素子による個別制御方式)。具体的には定速制御(60km/h以上)・抑速制御(40km/h以上)機能を追加したものとなっている[1]。補助電源装置は東洋電機製造製のGTOサイリスタを使用した昇降圧チョッパ式静止形インバータ(SIV・定格出力190kVA)を採用した[3]

台車は、651系で実績のあるボルスタレス式DT56系列を基本としており、ヨーダンパ付きロールゴム軸箱支持方式のDT56E形・TR241E形を装着する[2]。基礎ブレーキは片押し式踏面ブレーキ(ユニットブレーキ)、付随台車のみ踏面ブレーキに加えて1軸1枚のディスクブレーキを併用する[2]

ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、直通予備ブレーキ抑速ブレーキ・耐雪ブレーキを装備する[2]。付随車のブレーキ力を電動車で負担する遅れ込め制御を行う[2]。最高速度130 km/h時におけるブレーキ力を確保するため、滑走防止装置を装備する[2]

導入当初の運用線区が京葉線・内房線・外房線に限定されることから、当初はATCを搭載せず、将来総武本線系統の列車への運用を考慮し設置スペースを確保した準備工事にとどまった。当初は横須賀・総武快速線品川駅 - 錦糸町駅間を走れなかったが、同区間は2004年(平成16年)2月29日よりATS-P形に切り替わったため、結果としてATCを搭載せずに255系も入線できるようになった。

増備車

1994年製の2次車では、1次車の使用状況から仕様が一部変更された[4]

  • 側窓の上下寸法を60㎜拡大
  • 車外のガラス固定方法を押さえ金具方式をやめ、ガラスと構体間にシール材を充填する方式に変更
  • 各座席ごとに読書灯を設置、グリーン車の荷棚柱の灯具を廃止
  • 普通車の床敷物をフラットな形状に変更、グリーン車は通路のみから、全面じゅうたん敷に変更
  • 喫煙車のデッキに灰皿を設置
  • 運転士の視界を考慮して、運転席機器配置を一部変更
  • 各車両間に転落防止幌を取り付け

形式

モハ255形
3号車・8号車に連結される中間電動車。2号車、7号車とユニットを組む。PS26A形パンタグラフを搭載、取付け部を低屋根構造とすることで折りたたみ高さを3,980mmに抑え中央本線の狭小建築限界トンネルの通過が可能で、実際に同線への走行実績がある。主制御器であるVVVFインバータ装置、空気圧縮機 (CP) 、蓄電池 (BT)を搭載。自動販売機を設置する。
モハ254形
2号車・7号車に連結される中間電動車。3号車、8号車とユニットを組む。VVVFインバータ装置と冷房装置などのサービス機器に電力を供給する補助電源装置の静止形インバータ (SIV) を搭載。トイレ洗面所を設置する。
クハ255形
銚子・安房鴨川・館山方の制御付随車(9号車)。トイレ・洗面所を設置し、当系列では唯一の2デッキ構造である。
クハ254形
東京方の制御付随車(1号車)。デッキ付近に大形荷物置場を設置。車両の東京方にデッキがある。空気圧縮機(CP)を搭載する。
サロ255形
4号車に連結される付随車でグリーン車。座席配列は車椅子対応座席を除いて普通車と同様2+2であり、客室の中間がパーティションで区分されているのは、かつて半室で喫煙席・禁煙席を区別していた名残りである。車掌室、トイレ・洗面所、カード式公衆電話を設置する。
サハ255形
6号車に連結される付随車。車内販売準備室を設置する。
サハ254形
5号車に連結される付随車。車椅子対応の座席、トイレ・洗面所、多目的室を設置する。

機器更新

  • 初期車の製造から20年以上が経過して主要機器の経年劣化が目立ってきたため、2014年度から2016年度にかけて、大宮総合車両センターにおいて機器更新を実施した[5]
    • VVVFインバータ装置をGTOサイリスタ素子からIGBT素子を使用したSC111形(1C4M2群制御)に更新[5]
    • 補助電源装置(SIV)をIGBT素子を使用した待機2重系のSC92A形に更新[5]
    • 保安装置はATS-P形、ATS-SN形別々の搭載から、統合型ATS-P形装置に更新[5]
    • 車内は使用停止だった清涼飲料水の自動販売機や換気扇、公衆電話の撤去などが行われた。

運用

1993年7月2日に「ビューさざなみ」「ビューわかしお」として営業運転を開始した。2005年12月には「しおさい」での運行を開始する一方、「ビュー」の列車名による、車両の区別はなくなった。

以降は「さざなみ」「わかしお」「しおさい」の3列車で長らく用いられてきたが、2024年3月16日のダイヤ改正をもってE257系およびE259系に置き換えられ、定期運行を終了することが発表された[6]。今後は臨時列車では引き続き運用される[7]ほか、「鉄道コム」(朝日新聞社グループの鉄道情報サイト)によると、一部の『さざなみ』『わかしお』定期列車で同年6月下旬まで255系の使用が継続される[8]

定期運用開始前の1993年6月5日に団体列車として使用されており、その際には前面にジェフユナイテッド市原のステッカーが掲出されていた[9]

また臨時列車では、通常E257系で運行される成田線鹿島線の「あやめ」や、中央本線直通の特急「ビューかいじ」などで運用されたこともある。

編成表

2020年10月現在でBe-01~05の9両編成5本、計45両が幕張車両センターに在籍する。

形式
← 銚子・安房鴨川
東京・新宿 →
竣工 更新
クハ
255
モハ
255
モハ
254
サハ
255
サハ
254
サロ
255
モハ
255
モハ
254
クハ
254
編成番号 Be-01 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1993年3月30日 2016年3月9日
Be-02 2 3 3 2 2 2 4 4 2 1993年4月15日 2015年11月16日
Be-03 3 5 5 3 3 3 6 6 3 1994年10月29日 2016年6月23日
Be-04 4 7 7 4 4 4 8 8 4 1994年11月24日 2015年7月14日
Be-05 5 9 9 5 5 5 10 10 5 1994年11月30日 2015年2月6日

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第30回(1993年)論文番号403「房総特急255系電車主回路システム」305-309P記事。
  2. ^ a b c d e f 日本鉄道車両工業会「車両技術」200号(1993年6月)「255系特急形直流電車」pp.15 - 36。
  3. ^ 東洋電機製造「東洋電機技報」1994年7月号(第89号)8P。
  4. ^ 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」1995年2月号研究と開発「JR東日本255系特急電車2次車の概要」10-11P記事。
  5. ^ a b c d 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2015年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2015年版「JR東日本255系機器更新工事」89-90P記事。
  6. ^ “2024年春のダイヤ改正について”. 東日本旅客鉄道(JR東日本). 2023年12月16日閲覧。
  7. ^ 「ダイヤ改正で定期離脱の255系 臨時特急で運行継続へ 6月までの土休日」『』乗りものニュース、2024年1月22日。2023年3月26日閲覧。
  8. ^ 「255系、定期運転終了だったはずでは……!? ダイヤ改正後にも「わかしお」「さざなみ」で運用へ、その理由は」『』鉄道コム、2024年2月27日。2023年3月26日閲覧。
  9. ^ 『鉄道ファン』交友社、1993年9月1日、125頁。 

参考文献

  • 野元浩・五十嵐猛雄・菅康孝・牧野奈緒「BOSO VIEW EXPRESS その計画から誕生まで」『鉄道ファン 1993年7月号』第387巻、交友社、1993年7月、9 - 42頁。 
  • 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2015年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2015年版「JR東日本255系機器更新工事」
  • 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」1995年2月号研究と開発「JR東日本255系特急電車2次車の概要」(JR東日本運輸車両部車両課 堀岡健司)
  • サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第30回(1993年)論文番号403「房総特急255系電車主回路システム」305-309P
  • 東洋電機製造「東洋電機技報」1994年7月号(第89号)8P

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、JR東日本255系電車に関連するメディアがあります。
  • Bve trainsim - 愛称である房総ビューエクスプレスが名称の由来である。

外部リンク

  • JR東日本:列車案内>わかしお・さざなみ・しおさい(E257系(500番代)・255系)
  • グッドデザイン賞受賞概要

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