アルピーヌ・A350

アルピーヌ・A350
カテゴリー F1
コンストラクター アルピーヌ
デザイナー リシャール・ブーロー
後継 アルピーヌ・A500
主要諸元
エンジン ルノー・ゴルディーニ 2,996 cc[1] V8 自然吸気
トランスミッション ヒューランド・DL200[1] 5速[1]
燃料 エルフ
タイヤ ミシュラン
主要成績
ドライバー ベルギーの旗 マウロ・ビアンキ
初戦 出走せず
テンプレートを表示

アルピーヌ・A350(Alpine A350)は、フランスの自動車メーカー、ルノーの傘下にあったアルピーヌゴルディーニによって開発されたフォーミュラ1カーである。

概要

当初、フォーミュラ1車両を作るというこのプロジェクトは、アルピーヌにとっては技術試験を目的としたものだったが、ほどなく、実際にレースに参戦しようということに目的が変わった[2]

1968年シーズンの第6戦フランスGPで投入する予定で開発が進められ、第5戦オランダGP以降、登場が噂されてもいたが[3]、実戦に投入されることはなかった[4]。ドライバーは、テストドライバーを務めていたマウロ・ビアンキがそのまま起用される予定だった[3][4]

フランスGPに参戦する準備は整っていたにもかかわらず参戦に至らなかったのは、エンジンを製造していたゴルディーニの親会社であるルノーの経営陣がF1参戦に同意しなかったためだと言われている[5][4][6]

来歴

開発の端緒

F1において、1966年シーズンから3リッター規定のエンジンレギュレーションが始まることになっていたため(1963年に決定[7])、アルピーヌの創業者であるジャン・レデレはそれをF1参戦の好機と考えた[8]

1963年、レデレは「アルピーヌ・ルノー」としてF1に参戦しないか、ルノーに提案した[8]。その提案はルノーの経営陣に拒否されたため、レデレとアルピーヌの技術者たちは、旧知のアメデ・ゴルディーニが3リッターのV8エンジンを持っていることを知っていたため、そのエンジンを搭載することにした[8]

車両の開発とテスト

アルピーヌが車体、ゴルディーニがエンジンの開発を受け持つ形で、この車両の開発は1967年末に始まり、1968年4月に完成した[6]

完成後、ビアンキにより、ゾルダーザントフォールトでテスト走行が行われた[4][6]。6月23日にザントフォールトで行われたテストで出したタイムは有望で、前年6月に同地で開催されたF1のオランダGPで中団グリッドを獲得できるだけのタイムを記録したという[4][6]

車体はアルピーヌのリシャール・ブーロー(Richard Bouleau)によって設計され、エンジンはゴルディーニ製のV型8気筒エンジンが搭載された[3]。最高出力は310馬力(@7,500 rpm)と言われており、これはそれまでのアルピーヌ車両が搭載したエンジンの中でも最高という触れ込みだった[3]。しかし、このエンジン出力は、最大出力は410馬力を超えると言われていた当時のフォード・コスワース・DFVエンジンと比べ、およそ100馬力は劣っていた[4][6]。この点は課題だったが、アルピーヌとしては、ルノーが参戦を承認しさえすれば、ゴルディーニはより競争力の高い新型エンジンを開発せざるを得なくなるだろうと見込んでいた[4]

しかし、ルノーはF1参戦計画に同意せず[4]、翌1969年には、ゴルディーニがシングルシーター用に3リッターV8エンジンを開発することや、アルピーヌがF1参戦に向けた計画を進めることを禁止した[9]

その後

1968年フランスGPに参戦する計画が失敗に終わってから数か月後、A350は廃棄処分となった[9]。残存しているのは、激しく損傷した状態のボディワークの一部など、数点のパーツのみだとされる[9][6]

アルピーヌは1960年代末から1970年代初めにかけては、サーキットレースも引き続き行ったが、ラリーをより重視するようになった[2]。ルノーの経営陣はその後もシングルシーターとは距離を置いたが、エルフからの要請と資金援助により、アルピーヌは1970年頃からフォーミュラ3(F3)とフォーミュラ2(F2)用に車両を開発するようになり、やがて、やはりエルフの要請と援助により、ルノーは1970年代半ばにはF1参戦に向けた計画を始めた(詳細は「アルピーヌ・A500」を参照)。

脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ a b c Alpine & Renault(Smith 2008)、p.24
  2. ^ a b Alpine & Renault(Smith 2008)、p.20
  3. ^ a b c d オートスポーツ 1968年8月号(No.38)、「出場が遅れるアルピーヌF-1」 p.129
  4. ^ a b c d e f g h Alpine & Renault(Smith 2008)、p.32
  5. ^ Alpine & Renault(Smith 2008)、「Foreword - Mauro Bianchi」 p.8
  6. ^ a b c d e f “Alpine: Everyone deserves a second chance” (英語). Unraced F1 (2020年9月9日). 2023年3月21日閲覧。
  7. ^ Alpine & Renault(Smith 2008)、p.50
  8. ^ a b c Alpine & Renault(Smith 2008)、p.27
  9. ^ a b c Alpine & Renault(Smith 2008)、p.33

参考資料

書籍
  • Roy Smith (2008) (英語). Alpine & Renault - The Development of the Revolutionary Turbo F1 car 1968 to 1979. Veloce Publishing. ASIN 1845841778. ISBN 978-1-84584-177-5 
雑誌 / ムック
  • 『オートスポーツ』(NCID AA11437582)
    • 『1968年8月号(No.38)』三栄書房、1968年8月1日。ASB:AST19680801。 
フランスの旗 アルピーヌF1
2021年 - 現在
ワークスチーム
チーム首脳
  • フランスの旗 ブルーノ・ファミン (チーム代表、アルピーヌ社{親会社}モータースポーツ担当副社長)
  • フランスの旗 フィリップ・クリーフ(ポルトガル語版) (アルピーヌ社{親会社}CEO)
主なスタッフ
  • フランスの旗 デビッド・サンチェス(英語版) (エグゼクティブTD)
  • イギリスの旗 ジョー・バーネル (エンジニアリングTD)
  • 不明の旗 エリック・メイニャン (PUTD)
  • イギリスの旗 シアロン・ピルビーム(英語版) (パフォーマンスTD)
  • イギリスの旗 デイビッド・ウィーター (空力TD)
  • イギリスの旗 ロブ・ホワイト (オペレーションD)
  • オーストラリアの旗 クリス・ダイヤー(英語版) (車両性能責任者)
元関係者
現在のドライバー
過去のドライバー
車両
現在のスポンサー
関連組織
※役職等は2023年8月時点。
1976年
試作・試走のみ
主な関係者
車両
関連組織
関連項目
1968年
試作・試走のみ
主な関係者
車両
  • A350
関連組織