ホンダ・L700

L700

L700(エルななひゃく)は、本田技研工業がかつて生産していたライトバン型の小型商用車である。

本稿では、L700と共に設計されたP700や、その発展型のL800およびP800に加え、L700を元に試作された乗用車であるN800についても記述する。

概要

1965年9月に発売された商用車で、キャッチコピーは「高速時代のライトバン」。特徴としてはS600用をベースに開発されたL700E型 687cc 水冷直4DOHCエンジン(52馬力、シングルキャブレター)や、フロントサスペンションに日本車初のストラット式を採用したことなど、当時としては技術的に高度な設計を採っていたことが挙げられる。駆動方式は後輪駆動である。また、ボディ形式は2ドア+テールゲートの3ドアであり、構造的にはモノコックではなく、独立したフレームを持っている。

1965年11月には兄弟車としてピックアップトラック版のP700が発売されている。

しかし、当時最も一般的な小型貨物車であったダットサントラックの取り扱いに慣れていたユーザーには、あまりにも高回転型かつピーキーな性格のエンジン特性が嫌われ、販売面では大きく苦戦した。翌年には市場での競争力向上のためS800用のAS800E型 791cc エンジンをシングルキャブレターで58馬力にデチューンしたL800E型エンジンに換装したL800、P800に発展したが、売れ行きを挽回することはできず、1968年に生産を終了し短命に終わった[注釈 1]

販売台数が極めて少なかったことやアルミを多用したエンジンのために解体された個体が多いこと、当時から人気の高かったS600、S800の部品取りにされる事が多くあったという要因が重なり、Pシリーズおよび700・800をまとめても現存する個体は数える程しかなく、大変な希少車となっている。

前輪に採用されたストラット式サスペンションは、一般的には日本初とされる初代トヨタ・カローラに先んじている[注釈 2]が、販売台数が非常に少ないため、広く知られてはいない。また、独立したフレームを持ったボディ構造でありながら、ダンパーとコイルスプリングを分離させたため、トーションバー・スプリングを用いた他社の車と異なり、サスペンション保持部が大きくせりあがった、特異なフレーム形状となっている。リアサスペンションは当時ごく一般的だったリーフ式リジッドであった。

グレードはスタンダードのL700とデラックス仕様のLM700があり、LMではホワイトタイヤ、2段階ワイパー、熱線吸収ガラス、ラジオ、ヒーター、ウィンドゥウオッシャーなどが標準装備されていた。一方、P700では、ピックアップトラックという性格からか、Lシリーズと比べて装備品は非常に簡素なものとなっており、ラジオはおろかヒーター、シートベルト等も省略されておりオプションであった。

L700では、オプション部品としてクオーターウインドウの保護棒や、点検灯、ヘビーデューティー・リーフスプリング、ナンバーブラケットが用意されており、当時のホンダの力の入れ方がうかがえる。また、P700では、荷台部分にターポリン製のホンダ純正の(ホロ)および枠が用意されていたが、販売台数の少なさからして、これらの部品は既に現存していないものと思われる。

N800

N800は、L700をベースに開発された4人乗り乗用車で1965年10月に開催された、第12回東京モーターショーに参考出品された。

ボディサイズは、全長3,720mm、全幅1,465mm、全高1,330mm、ホイールベース2,245mmで、最高速度は150km/hと公表されていた。

ボディ前半はL700とほぼ同じデザインであったが、後半は独立したトランクを持った2ドアクーペに改装されていた。またサイドウインドウは前後ともに巻き上げ式であり、センターピラーの無い、いわゆるハードトップ形式を採っていた。構造的にはセミ・モノコック式である。

エンジンはS800と基本的に共通の791ccであるが、2連キャブレターで65馬力にデチューンしたものを搭載され、駆動方式は後輪駆動である。

サスペンションは前輪はL700と共通だが、後輪はスイングアクスル式の独立懸架であった。

しかし、当時のホンダの企業規模や市場性を勘案した藤沢武夫副社長(当時)の一声で市販化は見送られた[注釈 3]

N800のホイールハブは、ベースとなったL700/L800/P700/P800用(4穴)とは異なり、S500/S600/S800用と共通の5穴であり、S500/S600/S800[注釈 4]同様アルフィン式の4輪ドラムブレーキが採用されていた。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 1975年1月のシビックバンの登場まで、ホンダのラインナップから小型車のライトバンはなくなった。
  2. ^ 乗用車用としては、カローラが日本初である。
  3. ^ 予定通り市販されていた場合、N800は、前輪にストラット式サスペンションを採用した初の日本製乗用車になっていたものと考えられる。
  4. ^ ただし、モデル末期のS800Mは前輪ディスクブレーキを採用。

出典

参考文献

  • 特別企画「HONDA MUSIC!」 芸文社ノスタルジックヒーロー』1991年6月号、p60~p63.
  • CAR GRAPHIC LIBRARY世界の自動車35 『戦後の日本車-1』二玄社刊 p85.86.
  • 第12回東京モーターショー解説「ツーリングカーのプロトタイプ」(ホンダN800の解説)二玄社『CAR GRAPHIC』1965年12月号、p38~p40.

外部リンク

  • Honda | 四輪製品アーカイブ「L700 / P700」
ホンダ車種年表 1960年代-1980年代 (1990年代以降 →)
1960年代 1970年代 1980年代
3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
軽自動車 N360 ライフ トゥデイ(乗用)
Z
アクティストリート ストリート
ライフワゴン
LN360 ライフバン トゥデイ(商用)
ライフステップバン アクティバン アクティバン
T360 TN360 TNアクティ アクティトラック
ライフピックアップ
バモスホンダ
ハッチバック シティ
ジャズ
シティ
シビック シビック シビック シビック
クイント クイント
インテグラ
インテグラ
コンチェルト
アコード アコード アコード
アコードエアロデッキ
セダン
(5ナンバー)
N600E シビック
1300 145 シビック
バラード
シビック
バラード
シビック
クイント
インテグラ
インテグラ
コンチェルト
アコード アコード
ビガー
アコード
ビガー
レジェンド
セダン
(3ナンバー)
レジェンド
クーペオープンカー シティカブリオレ
1300クーペ 145 バラードスポーツCR-X CR-X
プレリュード プレリュード プレリュード
アコードクーペ
レジェンド
ハードトップ
トールワゴンワゴン シビック
カントリー
シビック
シャトル
シビック
シャトル
バン シティプロ
L700/L800 シビックバン シビックバン シビックプロ シビックプロ
トラック P700/P800
スポーツ S500 S600 S800
3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
ホンダ
自動車(アキュラ)
コンセプトカー
航空機
エンジン
ロボット
  • Eシリーズ
    • E0
    • E1
    • E2
    • E3
    • E4
    • E5
    • E6
  • Pシリーズ
    • P1
    • P2
    • P3
    • P4
  • ASIMO
パーソナルモビリティ
汎用製品
子会社
系列協力会社
生産工場
合弁会社
  • カテゴリ
ポータル 自動車 / プロジェクト 乗用車 / プロジェクト 自動車
   
    • 自動車の歴史
    • モータースポーツ
    • 自動車画像
    • 自動車関連のスタブ項目